着物を売ったら税金はかかる?確定申告が要らない理由と30万円の例外

公開日: 2026-10-11#税金 #確定申告 #着物買取 #生活用動産 #相続 / 法律と買取後の流れ

自分や家族が着ていた着物・帯を買取に出して受け取ったお金には、原則として所得税がかからず、確定申告も要りません。衣服などの「生活に通常必要な動産」の売却は非課税と法律で決まっているからです。

例外になるのは、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・真珠・さんご・べっこうなどの製品と、書画・骨とう・美術工芸品です。着物と一緒に帯留めやかんざしを売るときは、こちらに当たる品が混ざっていないかを見ます。

本サイトの運営者は着物の買取をしておらず、税理士でもありません。以下は、所得税法と所得税法施行令の条文(e-Gov法令検索)と、国税庁のタックスアンサー(いずれも2026年10月11日に確認)を読んでまとめたものです。個別の品の扱いは、税務署で確かめてください。

  1. 仕入れて売り続けていないか売るために買った着物を継続して売っているなら、非課税の対象から外れ、事業所得や雑所得になり得る
  2. 施行令第25条が挙げる品か貴石・半貴石・貴金属・真珠とその製品、べっこう・さんご・こはく・ぞうげ・七宝の製品、書画・こっとう・美術工芸品
  3. 1個または1組で30万円を超えるか超える品だけが非課税の範囲から外れる。条文に挙がる品に当たらなければ、30万円の線は使われない(着物が美術工芸品に当たるかは未確認)
着物や小物を売ったお金に所得税がかかるかを見る順番出典: 所得税法第9条第1項第9号、所得税法施行令第25条(e-Gov法令検索)、国税庁タックスアンサーNo.3105・No.1906(2026年10月11日確認)

着物を売ったお金が非課税になる根拠

所得税法第9条第1項は、所得税を課さない所得を並べています。その第9号が次の規定です。

自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゆう器、衣服その他の資産で政令で定めるものの譲渡による所得

国税庁のタックスアンサーNo.3105は、これを「家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得」と言い換え、課税されない譲渡所得の1つ目に挙げています。着物や帯は衣服に当たります。

確定申告については、タックスアンサーNo.1906に明記があります。フリマアプリなどでの売却を説明した箇所の注記で、「生活の用に供している資産(古着や家財など)の売却による所得は非課税(この所得については確定申告が不要)」としています。売り先が買取店でも、売った物が生活用の衣服であることは変わりません。

買った値段より安く売れた場合について、所得税法第9条第2項第1号は、生活用動産を売った収入金額が取得費などに満たないときの不足額を「ないものとみなす」と定めています。損として給与など他の所得から差し引くことはできない、ということになります。

30万円で線が引かれる品

非課税になる「政令で定めるもの」の範囲を決めているのが、所得税法施行令第25条です。生活に通常必要な動産のうち、次の品で1個または1組の価額が30万円を超えるものを、非課税の範囲から外しています。

一 貴石、半貴石、貴金属、真珠及びこれらの製品、べつこう製品、さんご製品、こはく製品、ぞうげ製品並びに七宝製品

二 書画、こつとう及び美術工芸品

着物の小物をこの語に当てはめると、次のような品が候補になります。どれも、素材と1点の価額によって扱いが変わります。

条文の語 着物まわりで当てはまり得る品
さんご製品 さんごの帯留め、かんざし、根付
べつこう製品 べっこうのかんざし、くし
真珠及びその製品 真珠を使った帯留め
貴金属及びその製品 金・プラチナの帯留め
貴石・半貴石の製品 ひすいなどの石を使った帯留め
七宝製品 七宝焼の帯留め

30万円の上限が付いているのは、この2号に挙げられた品だけです。条文を読む限り、着物や帯がこれらに当たらなければ、30万円を超える値が付いても生活用動産として非課税の側に残ります。ただし、着物が「美術工芸品」に当たるかは、後の節のとおり確かめられていません。

課税されない(申告不要)

  • 自分や家族が着ていた着物・帯・長襦袢(30万円を超える作家物は、美術工芸品に当たるかが未確認)
  • 施行令第25条の品でも、1個・1組が30万円以下のもの

課税の対象になり得る

  • 1個・1組が30万円を超える、さんご・べっこう・真珠・貴金属などの帯留めやかんざし
  • 1個・1組が30万円を超える書画・骨とう・美術工芸品
  • 売るために仕入れて、継続して売っている着物
着物を売るときの所得税の扱い出典: 所得税法第9条、所得税法施行令第25条(e-Gov法令検索)、国税庁タックスアンサーNo.3105・No.1906(2026年10月11日確認)

まとめて売っても、判定は1点ずつ

施行令第25条が見るのは「一個又は一組の価額」で、売った代金の合計ではありません。着物10枚と帯留めをまとめて買取に出し、合計が30万円を超えたとしても、それだけで課税にはなりません。反対に、まとめ売りの中のさんごの帯留め1点が30万円を超えていれば、その帯留めは非課税の範囲から外れます。

どこまでを「1組」と見るか(帯留めと帯締めの組み合わせなど)を国税庁が説明した資料は、確認した範囲では見つかりませんでした。

後から確かめられるように、小物を含めて売るときは、1点ずつの買取額が分かる明細をもらっておくと安心です。明細の形式は店によって違うので、申込みのときに出してもらえるか聞いておきます。売る前に品物を写真と一覧で控えておく方法は、実家整理で出た着物の分け方にまとめています。

作家物や人間国宝の着物は「美術工芸品」に当たるのか

施行令第25条第2号には「美術工芸品」も入っています。ただ、着物がどんな場合に美術工芸品として扱われるのか、作家物や重要無形文化財保持者(人間国宝)の作品が含まれるのかを国税庁が示した資料は、今回確認したタックスアンサー(No.3105・No.1906)には見当たりませんでした。 そのため、当サイトでは線を引かず、作家物の着物や帯に30万円を超える値が付いたときは、売った年の翌年の確定申告の時期までに、品物と明細を持って税務署に相談してください。相談先は国税庁の税についての相談窓口に載っています。作家名が査定額にどう効くかは、ブランド・作家の着物の記事で買取各社の公開情報から確かめています。

30万円を超えた品が課税されるときの計算

非課税から外れた帯留めなどは、譲渡所得として給与などの所得と合算する総合課税の対象です(タックスアンサーNo.3152)。計算式は次のとおりです。

譲渡所得の金額 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)- 50万円

取得費は一般に購入代金のことで、50万円は特別控除です。持っていた期間が5年を超える品は長期譲渡所得になり、計算した金額の2分の1が総合課税の対象になります。

この式のとおり、30万円を超えて非課税から外れた品でも、売った額から取得費と譲渡費用を引き、さらに50万円を引いて残りが無ければ、譲渡所得は0になり所得税はかかりません。50万円の特別控除は品物ごとではなく、その年に売った総合課税の品の利益の合計に対して年50万円です。相続した品は、取得費や持っていた期間の数え方が自分で買った品と変わることがあるため、当てはめる前に税務署で確かめてください。

確定申告が要るかどうかは、その年のほかの所得と合わせて決まります。会社員なら、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると原則として確定申告が必要です(タックスアンサーNo.1900)。所得税の確定申告が要らない場合でも、住民税の申告が別に要ることがあるので、お住まいの市区町村で確かめてください。自分のケースに当てはめるときは、税務署で確かめてください。

仕入れて売る場合は、生活用動産の譲渡とは扱われにくい

非課税になるのは、生活の用に供している資産を売ったときです。リサイクルショップなどで中古の着物を買い集め、フリマアプリや買取店に売って差額を得る、という売り方は別の扱いになります。

タックスアンサーNo.3105は、棚卸資産など同ページが挙げる資産以外のものでも、相当の期間にわたり継続的に譲渡している場合の所得は「事業所得または雑所得となります」としています。仕入れた着物の転売そのものに触れた記載ではありませんが、売るために買い集めた着物は生活に使う衣服とは言いにくく、この扱いに近いというのが当サイトの読み方です。タックスアンサーNo.1500は、副収入のうち営利を目的とした継続的なものを「業務に係る雑所得」と説明しています。どこからが継続的な売買かの線は資料に示されていないため、売るために買った着物がある人は税務署に相談してください。

親から相続した着物を売るとき

所得税法第9条第1項第9号は、本人だけでなく「配偶者その他の親族が生活の用に供する」資産も対象にしています。相続した着物を売った場合も、見るのは同じ条文と施行令第25条で、30万円を超える帯留めや美術工芸品が混ざっていないかが論点になります。ただし、相続した着物の売却そのものについて国税庁が個別に示した資料は、確認した範囲では見つかりませんでした。迷う品がある場合は税務署に確かめてください。

相続税は所得税とは別の税で、着物を含む遺産全体の額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるときに申告が要ります(タックスアンサーNo.4102)。また、相続放棄を考えているなら、売る前に確かめてください。民法第921条第1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき(保存行為などを除く)は、単純承認をしたものとみなすと定めています。

まとめ

自分や家族が着ていた着物・帯を売ったお金は原則として非課税で、確定申告も要りません。30万円を超える品があっても、50万円の特別控除を引いて残りが無ければ所得税はかかりません(特別控除は、その年に売った総合課税の品の利益の合計に対して年50万円です)。気にするのは、さんご・べっこう・真珠・貴金属などの帯留めやかんざしで1点30万円を超えるもの、30万円を超える値が付いた作家物、売るために仕入れた着物の3つです。当てはまりそうな品があれば、1点ずつの明細を残し、税務署に相談してから判断してください。

出典